公正証書遺言書(遺言状)の作り方

公正証書遺言書(遺言状)の作成方法を見てみましょう。

(1)法定相続人を調べる

たとえば法定相続人以外の第三者に遺産をあげる場合、法定相続人からの遺留分の減殺請求など考えられますので、あらかじめ法定相続人が誰かということと、それぞれの法定相続分を把握しておく必要があります。
さらに、子連れで再婚したり愛人に子供がいるような場合は、認知の手続きをしているかによって相続人が変わります。このように誰が法定相続人になるのかを確認しなければなりません。

(2)財産の内容を確認する

預貯金と一口にいっても、複数の口座がある場合には、誰にどの預貯金をあげるのか正確に指定しなければなりません。また、遺言書(遺言状)はその文面をもとに、実際に不動産の登記や預貯金の名義変更を行う際の根拠となる書類ですから、財産の正確な情報を記載しなければなりません。遺言書(遺言状)を作成する前に、自宅の権利書や預金通帳を手元に集めて、財産リストを作成したほうが良いと言えます。不動産の場合、現在の評価金額をある程度調べる必要もあります。 (固定資産評価証明書を役所で手に入れる。)
また、借金も立派な財産です。こちらもきちんと一覧表をつくっておくのが相続人に対する思いやりです。

(3)誰にどの財産をあげるかを決める

誰にどの財産をあげるべきかということが遺言の一番の問題で悩むところでしょう。通常相続税の節税の関係から配偶者には遺産の1/2になるように考え、残りを子供たちに平等になるように考えたりします。しかし財産がすべて現預金の場合はともかく、現実には均等にわけられるものではないです。そこで遺産分割協議の席で争いになりかねませんので、遺言書(遺言状)の中でその財産をその人にあげる理由について簡単に触れておくと、みんなの理解を得やすくなります。たとえば、「会社の経営権を分散させるわけにいかないので、私の後を継いで経営を行ってくれる長男に全株式を相続させる。他の者はそれで納得するように」と書いておくと争いも起こりにくいでしょう。

(4)遺言書を下書きする

遺言書の下書きは、手書きでもいいし、パソコン・ワープロを使ってもOKです。相続人や財産の一覧表を作り、誰にどれをあげるのか最終的な原案が決まったら、それを文章の形で下書きしたほうが良いでしょう。ただし、公正証書遺言の場合は、公証人に自分の考えを述べると言う事でもいけますので、最低限公証人に解るようなメモ的なものでも構いません。

(5)証人2人に依頼する

公正証書遺言の作成では、証人2人の立会いが求められています。プライバシーを知られても抵抗が少ない弁護士や行政書士などの専門家に依頼するのも良い方法です。
なお、以下の人は証人にはなれません。

  1. 将来相続人となる人(法定相続人・遺言により遺贈を受ける人)と、その配偶者・直系血族
  2. 未成年者
  3. 公証人の配偶者や四親等以内の親族、公証役場の書記官や従業員
  4. その他、遺言の内容が読めなかったり理解できない人

(6)公証人と打ち合せする

一度公証役場に行って遺言書作成の打合せをします。最低1回、顔をあわせて打合せを行い(本人でなくてもかまいません)、その後はファックスや郵送で遺言書の文面をやりとりするのが一般的です。
○遺言公正証書を作成するときに必要な書類をすべて持参する

  1. 遺言者の印鑑証明書 1通
  2. 遺言者の実印
  3. 遺言者と相続人との関係、相続人の現在の氏がわかる戸籍謄本
  4. 遺言で財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
  5. 遺贈し又は相続させる財産が不動産の場合に登記簿謄本及び固定資産評価証明書
  6. 遺贈し又は相続させる財産が不動産以外の財産の場合それらを記載したメモ(例えば預金なら銀行名・支店名・口座番号・名義等)
  7. 証人二人の住所・氏名・生年月日・職業を記載したメモ
  8. 証人二人の免許証等本人確認が出来る書類
  9. 証人各人の認印

参考 全国の公証役場

(7)遺言書の文面を確認する

打ち合わせにもとづいて、公証人が遺言書の文案を作成しますので、遺言者は、再び公証役場を訪ねるか、ファックスや郵送で文案を送ってもらい、内容を確認します。内容が間違っていたり変更したい場合は、赤字を入れて送り返すなどして、文案を確定します。

(8)公証役場へ行き、公正証書遺言を作成する

あらかじめ予約した日時に、証人2人とともに公証役場に行きます。
公証人は、まず遺言者が本人であることを確認してから、遺言書を一字一句読み上げ、内容があっているかどうか遺言者に確認します。遺言者は手元の資料をみながら内容を確認し、適宜、公証人の質問に答えます。公正証書遺言は同じ内容のものが3部作られるので、その全てに署名押印します。その後、公証人と証人2人も同じように署名押印し、遺言書が完成します。
なお、3部のうち「原本」はそのまま公証役場で保管されます。さらに遺言の中で遺言執行者を決めてある場合は、「謄本」を遺言執行者で保管してもらいます。

(9)公証人への手数料

財産価額(時価) 基本料金
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下
(または算定不能)
11,000円
1000万円まで 17,000円
3000万円まで 23,000円
5000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円
これを超えるときは、超過額5000万円までごとに
次の金額が加算されます。
~3億円 13000円
~10億円 11000円
10億円を超える 8000円

このほかに、遺言手数料(財産が1億円までは11,000円)、遺言書の紙代(1枚あたり250円位)がかかります。
【例】財産の価額が3000万円の場合
基本料金23,000円+遺言手数料11,000円+紙代3,000円程度=37,000円程度かかります。
※公証人に出張してもらうときは、出張手数料として基本料金の5割増しになります。日当(1日2万円、ただし4時間以内1万円)、交通費などの実費が別途必要です。

公正証書遺言の見本

平成壱〇年第〇〇〇号
           遺言公正証書

  
本公証人は、遺言者〇〇 〇〇の嘱託により証人〇〇 〇〇・証人〇〇 〇〇の
立ち会いのもとに左の遺言者の口述を筆記し、この証書を作成する。

第1条 次の不動産は、妻兵庫春子(昭和○年○月○日生・住所神戸市○○区○○町○丁目○号) に相続させる。

所 在   神戸市○○区○○町○丁目

地 番   ○番

地 目   宅地

地 積   220.00 平方メートル

所 在   神戸市○○区○○町○番地

家屋番号  ○番

種 類   居宅

構 造   木造瓦葺平家建

床面積  150.00 平方メートル

第2条○○株式会社 株式 5,000株は、長男兵庫一男(昭和○年○月○日生・住所神戸市○○区○○町○丁目○号)に相続させる。

第3条○○商事株式会社 株式10,000株は、妹姫路夏子(昭和○年○月○日生・住所姫路市○○区○○町○丁目○号)に相続させる。

第4条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として次の者を指定する

兵庫県神戸市○丁目○番○号

    行政書士   〇〇 〇〇


本旨外要件
兵庫県神戸市○丁目○番○号
職業  会社員
  遺言者 兵庫 太郎
昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
右は印鑑証明書を提出させてその人違いでないことを証明させた。


兵庫県神戸市○丁目○番○号
職業  行政書士
証人 〇〇〇 〇〇〇
昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
兵庫県明石市○丁目○番○号
職業  会社員
証人 〇〇〇 〇〇〇
昭和〇〇年〇〇月〇〇日生


右遺言者および証人に読み聞かせたところ、各自筆記の正確なことを承認し、左に証明捺印する。
〇〇 〇〇  印
〇〇 〇〇  印
〇〇 〇〇  印
この証書は民法第 九百六拾九条第壱号乃至第四号の方式に従い作成し、同条第五号に基づき左に署名押印する。
平成拾年   月  日左記本公証人役場において
兵庫県神戸市○丁目○番○号
神戸地方法務局所属
公証人      〇〇 〇〇  印
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この正本は平成○年○月○日遺言者兵庫太郎の請求により左記本職の役場において作成した。
神戸地方法務局所属
公証人      〇〇 〇〇 印


なお、当事務所では遺言書(遺言状)の作成に関するサポートをしております。自筆証書遺言書、公正証書遺言書、秘密証書遺言書などをお考えの場合、ご相談ください。メール相談は初回は無料です。

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