任意後見制度とは

法定後見が判断能力が現に劣っている場合の保護制度であるのに対して任意後見制度は、まだ判断能力が十分にあるときに、加齢による老人性痴呆等で判断能力が低下する場合に備えて、信頼できる人(任意後見人)との間で自分の生活、療養看護、財産管理についてどういう保護をしてもらうのかをあらかじめ契約をしておくという制度です。

また、この任意後見契約は契約をしたら即保護等の効果が発生するということはなく、将来本人の判断能力が低下した段階で任意後見人等が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申告して、任意後見監督人が就任したときから任意後見契約の効力が生じます。

任意後見監督人は任意後見人を監督します。また家庭裁判所は任意後見監督人から任意後見人の仕事の様子の報告をもらい任意後見監督人及び任意後見人を監督します。
このように2重のチェック機能で任意後見人を監督することで任意後見人の権利の濫用を防止し、本人の保護を図るようになっていますので、安心して制度を利用することができます。

その他、任意後見制度は知的障害者や精神障害者の親が自分の老後や死後の子の保護のために活用することもできます。この場合は遺言を残すことをお勧めします。

任意後見契約

最初に任意後見契約で後見人となる信頼できる人を選ぶことになります。
任意後見人の資格には、特に制限はなく、法人でも、また部門別に複数の人を選任することも可能です。
親族はもちろんのこと、弁護士や行政書士等の法律の専門家や社会福祉士等の福祉の専門家に依頼することもできます。(当事務所でもサポートしております。)

任意後見契約の締結は、公正証書で作成する必要があります。
公証役場に出向いて作成することになりますが、公証役場に行けない場合は公証人に病院や自宅に来てもらって作成することもできます。

必要書類

  1. 本人の戸籍謄本、住民票各1通
  2. 任意後見受任者の住民票1通
  3. 公正証書作成手数料 1件につき11,000円

その他登記費用など全部で2万円程度の公正証書作成のための費用が掛かります。

新しい成年後見制度

高齢化社会への対応及び知的障害者・精神障害者等の方々の生活面の支援に対応するため、また自己決定の尊重・残存能力の活用などに対応するべく、より柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度として新しいシステムが開始されました。

任意後見契約の内容

任意後見人に委任する事務の範囲については、財産管理に関する法律行為(不動産などの処分・賃貸借契約の締結・預貯金の管理・相続時の遺産分割協議など)と身上監護に関する法律行為(医療契約や福祉サービス利用契約の締結など)で本人と任意後見人受任者との話し合いで決め、代理権付与の対象となる法律行為を明確に特定します(代理権目録の作成)。

なお、任意後見人ができる委任事務は契約等の「法律行為」であって、介護サービス等の身の回りの世話である「事実行為」は含まれません。
従って介護サービスなどを希望する場合は、任意後見人が本人の代理人として要介護認定の申請や介護サービス業者等と介護契約を締結し、身の回りの世話はそのサービス業者が行うことになります。

代理権目録(どのような代理権を与えるか)

  1. 不動産、動産等すべての財産の管理・保存・処分等に関する一切の事項
  2. 金融機関、証券会社、保険会社とのすべての取引に関する一切の事項
  3. 定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払いに関する一切の事項
  4. 生活に必要な送金、物品の購入、代金の支払いに関する一切の事項
  5. 医療契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約に関する一切の事項
  6. 登記済権利証、預貯金通帳、株券等有価証券又はその預り証、印鑑、印鑑登録カード、各種カード、貴重な契約書類の保管及び各事項処理に必要な範囲内の使用に関する一切の事項
  7. 以上の各事項に関して生ずる紛争の処理に関する一切の事項(民事訴訟法第55条1,2項の訴訟行為、弁護士に対する上記訴訟行為の授権、公正証書の作成嘱託を含む。)
  8. 上記各項に関連する登記、供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する一切の事項
  9. 複代理人の選任、事務代行者の指定

任意後見契約が公正証書により作成されると公証人の嘱託により任意後見がされた旨の登記がなされます。

任意後見監督人選任の申立

加齢などによって、本人の判断能力が不十分な状況となったときに、任意後見受任者または本人・配偶者・四親等内の親族が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立を行います。なお、本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任する場合に、本人が意思表示ができる場合には本人の同意が必要です。
家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されたことで任意後見契約の効力が生じ、契約で定められた任意後見人が、任意後見監督人と家庭裁判所の監督の下に契約で定められた特定の法律行為を本人に代わって行います。

任意後見監督人の職務

  1. 任意後見人の事務を監督すること
  2. 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること
  3. 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること
  4. 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること

と定められており、さらに任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができるとなっており、任意後見人の権利濫用を防止する仕組みとなっています。

後見人への報酬

後見人の報酬については契約内容等にもよりますが、専門家等に依頼する場合は月額3万円前後が多いようです。
親族に依頼する場合は無報酬とする場合が多いようですがその場合は遺言を作成して配慮するなどのケースもあります。
後見監督人の報酬は本人の財産等を考慮して家庭裁判所が決定します。



なお、当事務所では成年後見(法定後見・保佐・補助)や任意後見に関するサポートをしております。成年後見の利用をお考えに場合、ご相談ください。メール相談については初回無料で対応させて頂いています。

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