時効の中断・援用

時効と言う制度が有りますが、これは一方で権利を得ることが出来ますが、方や権利を失うと言う正反対の効果になりますが内容証明でその権利を保全する事が有ります。

時効とはどういう事?

時効という言葉はよくテレビのニュースやサスペンス番組で耳にすると思います。犯人が捕まらずにうまく逃げて時効になったとか、あと数時間で時効が完成するという時に捕まってしまったとか言っているあれです。
また、借りたお金も時効が来てしまうと、お金を返さなくてもよくなる可能性があります。

一般的に時効と聞くと、上の例のようにある一定期間が経過すると権利が無くなってしまう「消滅時効」をさしているようですが、たとえば他人の土地を自分のものとして暴力などを使ってではなく、また誰にでも分かるように占有を20年間しているとその土地は自分のものになってしまいます。またこの期間は要件次第では10年間で達成されることがあります。このことを「取得時効」といいます。
近代の法理論では権利の上にあぐらをかく人は保護する必要は無いという考え方と言えます。

◆消滅時効とは

一定の時間の経過によってその権利が消滅してしまう、というものです。「飲み屋のツケ」は1年で時効になります。飲み屋は時効が完成する前に相手方にツケ(債務)があることを認めさせたり(承認)、裁判上で手続きをしないと、そのツケを請求できなくなります。

時効が完成する前に、とりあえず内容証明郵便で相手に請求をして時効を停止させます。6ヶ月間は時効の進行が止まりますので、その間に裁判上の請求を行って時効の中断をする必要があります。

主な債権の消滅時効期間

時効期間 債権の種類
1年 短期雇用(月、週、日雇い)人の給料(労働基準法適用外賃金)
大工などの手間賃、芸能人のギャラなど
タクシー代、運送賃など
旅館・ホテル宿泊料、飲み屋のツケ
引越し業者への家財の損害賠償請求権
手形裏書人、為替手形の振出人に対する請求権
2年 商売上の売買代金(売掛金他)
労働者の給料請求権(労働基準法適用分)
交通事故の保険金請求権(自賠法)
弁護士費用
塾の月謝
3年 交通事故等(不法行為)の損害賠償請求権
医療費、調剤料
建築・修理などの請負代金請求権
約束手形の振出人、為替手形の引受人に対する請求権
5年 商人間の貸金、サラ金の貸付金
退職金請求権
10年 個人間の貸金
個人間の売買代金
敷金・保証金の返還金請求権

上記のうち時効期間が5年以下のものを短期消滅時効と言います。これらについて裁判上の手続きを行って、確定判決を得ると時効期間が判決の確定日より10年になります。

消滅時効の起算点

消滅時効は、権利を行使できるときから進行します。具体的には、確定期限付債権及び不確定期限付債権については期限が到来した時から、期限の定めのない債権については契約が成立したときからが時効の起算点となります。
なお、損害賠償請求権については、債務不履行によるものと、不法行為によるものがありますが、前者は、本来の債権の内容が変更されたものにすぎないので、履行を請求できる時から進行します。後者の場合には、一般債権と性質が異なりますので、民法724条に別途規定がされていて被害者が損害および加害者を知ったときから3年、または不法行為のときから20年で時効消滅してしまいます。

◆取得時効

他人の物を平穏かつ公然に「所有の意思」をもって一定の時間継続して占有することで、原則20年経つと自分のものになる、という規定です。更に、その占有し始めたときから、それは自分のものだと信じ込んで、そう信じ込むことに過失がなければ(無過失)10年で自分のものになります。
例えば、ある人が他人の不動産を、平穏(奪い取ったわけではない)かつ公然に10年間占有していた場合、その占有を開始したときから 善意無過失だったら、その人は占有を開始した10年前に遡ってその不動産を取得できます。また他人のものと知りながら(悪意)、それを知りえる状態(有過失)にあった場合でも20年で取得できることになります。
但し、時効による取得の効果を得るためには時効の援用をしなければなりません。

◆時効の停止

もうすぐ時効を迎えてしまう、というときに一定期間だけ時効が完成するのを止めることが出来るのを時効の停止といいます。この場合に内容証明郵便などの確定日付のある書面で相手方に催告(請求)します。こうすることで、時効完成が6ヶ月間延長されますので、その期間内に裁判上の請求等を行う事で時効を中断さる事が出来ます。裁判上の手続き(請求、仮差押、仮処分等)をせずにただ単に電話やハガキで督促しても、それはここで言う「請求」とはなりませんので注意が必要です。

◆時効の中断

時効の中断とは、それまで経過した時効期間がゼロになる(振り出しに戻る)ことを意味します。以下が、時効の中断事由とされています。

請求(裁判上の請求、支払督促など)
「裁判上の請求」では、その訴訟が起こされた時点で時効が中断しますが訴えの却下または取下げがあると時効中断の効力ははじめからなかったことになります。
差押え、仮差押え、仮処分
裁判所の関与で強制的に執行します。
承認
債務者自身が自分の債務を自ら認める行為です。例えば、請求に対して「もう少し待ってくれ」とか「分割にしてくれ」とか、借金の一部だけでも支払ってもらえたらそれで承認したことになります。このような場合には債務承諾書等の書面を書いてもらうことが肝要です。つまり「○月○日までに必ずお返しします」などの約束を承認の日付が入った書面に書いてもらう事です。

◆時効の援用

時効は、単に時効期間が経過しただけでは何の効果もありません。時効が完成して利益を受ける人、例えば消滅時効の場合では債務者が「時効だから借金は払いません」と主張することで時効の効果が生じます。この意思表示のことを「時効の援用」といいます。
ところが、期間の上では時効が完成している場合に、借金があることを認めたり、その一部を支払ったりしたら、その時効の効果はなくなってしまい時効の援用は出来なくなります。
そこで仮に、時効期間が経過してしまってても、相手がそれをも忘れていて時効の主張もしなければ、 内容証明郵便で請求して債務の承認をさせるとか一部を支払ってもらうとかして、時効を中断させることが出来ます。

◆時効の放棄

時効が完成したときの利益を受けるかどうかは、本人の意思次第です。時効が成立したといっても「私は借りたものは返すのだ」と言う人までの意思を無駄にしないために、民法は時効の利益は放棄できると定めています。
しかし民法では、時効が完成する前に時効の利益を放棄することは認めていません。例えば、契約書に「時効が完成しても放棄します。」などという契約条項があったとしても その条項は無効となります。

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